【 10年間を振り返って】

2014年9月。
流山おおたかの森に1教室目を開くことを決めた私たちは、まず地域の保護者の声を聞くことから始めました。当時は民間学童が今ほど主流ではなかったため、私たちも手探りでした。まだ立ち上がっていない民間学童のワークショップにたくさんの方が来てくださり、「高学年になったら行きたがらなくなる」「学童に預けることに罪悪感がある」「家ではできない体験をさせてほしい」など学童への不安と期待を本音で語ってくれました。
これらの声を受け取り、ナナカラは【放課後を子どもたちの未来につながる時間にする】と強い覚悟を持って2015年4月に1教室目を流山おおたかの森に開校しました。

1年目から子どもたちが経営するナナカラ会社を設立しました。十万円の融資を受け、まず畑を借りました。野菜を育て、販売したのですが、それだけでは利益どころか融資分を返済することもできません。社長、副社長、会計を中心にみんなで解決策を話し合い、野菜を使ったレストランを開店することにしました。何を作るか?いくらで販売するか?を決めましたが、それでも足りません。そこでレストランに来るお客様にPRをしたい企業に営業に行きました。マンションの販売やモノづくりの会社に協賛金をいただき、結果、五万円もの利益を出すことができました。
その使い道についても、子どもたちが話し合って決めました。最初は学童で使うおもちゃを買う予定でしたが、最終的には3万円を寄付することにしました。
「私たちは十分持っている。幸せは分け与えた方が増える」と言った子どもたちを見て、とても誇らしく思ったことを今でも覚えています。

1つの教室から始まったナナカラは現在、6教室あります。様々なプロジェクトで6教室の交流機会を作っており、子どもたちにとって非常に刺激的な時間になっています。
教室によって大きさも人数も雰囲気も異なります。お互いの同じと違いを知ることで「えっ!そんな楽しいことやってるの?」「じゃ、私たちの教室でもできるかな?」と主体的な行動につなげています。
普段はオンライン越しなので、キャンプなど6教室合同で行うイベントをとても楽しんでいて、終わった後、手紙のやり取りが始まり、教室を行き来している先生が郵便屋さんのように繋いでいます。

ナナカラの面白いところは「違う学年」「違う学校」だけでなく「違う市」とも繋がれることです。子どもたちが「自分の中の当たり前」の外を知り、広い価値観に出会うことで、様々なものの見方を学ぶことができます。多角的に物事を見ることができる力こそ、変化の激しいこれからの世界で必要だと考えています。

ナナカラの10年間で忘れられないのがコロナ禍での取組です。子どもたちの体験をどうすれば止めなくて済むのだろう?休校中をどう過ごせば素敵な時間になるだろうか?と考えました。その一つの案が「世界で一つの本を作ろう」でした。各々が自分の大好きなことを深ぼる時間にし、オンラインでイラストレーターや編集者、専門家のサポートの中、図鑑、物語、写真集、様々な本を完成させました。また、高学年の子から「コロナ禍で頑張っている警察官や医療や介護関係者の方のことが知りたい」という声が上がり、オンラインで繋いでいただき、お話をお聞きしました。その後「私たちは何のために生きているのか?」「音楽は必要ないのか?止めて良いのか?」という哲学的な対話が子どもたちの中で繰り広げていました。大変な状況の中でも、子どもたちは問いをもち、主体的に情報収集をし、自分なりの考えを言葉にしていたことが非常に印象に残っています。

コロナ禍が終わったあとも、たくさんの職業や企業とコラボして、知見を広げ続けています。

10年たった今でも私たちは手探りです。社会も子どもたちも変わっていく中で、ナナカラのスタッフも常に過去の成功ではなく、今の課題に目を向けて、子どもたちにとって最善の環境とはどんなものかを話し合っています。

毎月1回「くすぐり会」を開催し、子どもたちの日々の良いエピソードを6教室の先生方で共有する時間を取っています。元気の良い子どもたちとの日常は慌ただしいですが、その中でスタッフは1人1人の何気ない言葉や行動に目を配っています。「下の学年の子が入ってきたら、イキイキとして、自分のこともしっかりやるようになったし、下の子の面倒をみてくれます。お兄ちゃんになりたかったようで、すごく喜んでいました」「コンプレックスを感じている子に、年下の子が『それがあなたの良いところだよね』とボソッと伝えていました」など、エピソードトークが毎月たくさんスタッフから出てきます。

子どもたちは子どもたちによって刺激され、成長していきます。私たち大人より仲間の影響力は絶大です。だからこそ、私たち大人は一歩後ろに下がって、子どもたちの関係を見守りたいです。そして、良い関係を築くために必要な環境づくりを行っていきたいと思っています。

【放課後を子どもたちの未来につながる時間にする】と覚悟をもって歩んだ10年間。その結果は卒業生の生き方に表れると私たちは考えております。
次の10年も子どもたちの未来のために、私たちも試行錯誤していきます。

〈10周年メッセージ〉

◾卒業生より

◾企業や大学などコラボ団体より

◾習い事の先生より