「自分で選び、行動し、創る」 市進の体験型学童施設

ナナカラ コンセプトブック対談記事

 

イラスト・デザインを担当された(株)聴くと描く代表取締役 小久保明美さんと、文章担当の市進ラボ /取締役 尾崎えり子さんに『ナナカラ コンセプトブック』について伺いました。

僕の前に道はない。僕の後ろに道はできる

Q 今回、なぜコンセプトブックを作ろうと思ったのですか?

尾崎

2015年に1教室目を開校したナナカラも2022年度から8年目に入ります。開校時に第一期生として入室した小学1年生が中学1年生になりました。学童で過ごす“目的のない放課後”を未来に活きる時間にするために様々な取り組みを実施してきましたが、このタイミングで一度立ち止まり、必死に走ってきた7年間を振り返ることにしました。コンセプトブック制作を通して「私たちは何を子どもたちに残すことができたのか?」を考え、私たちが今後向かっていく方向性を決めたかったんです。

Q 高村光太郎の「道程」を軸に展開されていますが、なぜこの詩を使おうと思ったのですか?

尾崎

ナナカラは決して魅力的なコンテンツを最初から用意していたわけではなく、子どもたちが「やってみたい」ということを一緒に考えながら作ってきました。ですので、想像もしていないことがたくさん起こりました。そして今も毎年子どもたちの希望や好奇心によって取り組みを変えています。常に私たちは新しいチャレンジをし続けているんです。「これをどうやって表現すればいいかなー」と関口取締役と話をしていると、ふと「僕の前に道はない。僕の後ろに道はできるって感じですよね」と思いついたんです。どちらが言い出したかも忘れたくらい、お互い同じタイミングで高村光太郎さんの詩を思い浮かべました。
あまりに私たちが大切にしてきた考え方とピタッときたので「これだ!!!!」となりました。
そのあとは「道程」を読みながら、ナナカラの子どもたちの視点で高村光太郎さんの詩を編集させていただきました。

Q この文章を初めて読んだ時、どう思いましたか?

小久保

お腹の中がグワっと熱くなりました。未知の道へ踏み出す子供たちを、力強く鼓舞する文章だと思いました。と、同時に、「道」を軸として全ページを繋ぐイメージが湧いてきました。

Q イラストを考える時に一番こだわったことは何ですか?

小久保

「道」がテーマなので、全ページが続き絵の作品として成り立つこと。それと同時に1ページずつ単体でも作品として成り立つこと。この二つを両立させることが一番悩みましたし、こだわりました。
お風呂に入っている時も、ご飯を食べている時もずーっと考え続けていました。

土を踏みしめる躍動感、力強さを表現

Q 表紙の子の表情が無表情になっているのは何か意味がありますか?

小久保

子どもって何かを真剣に考えたり、集中していたり、興味を持っている時って無表情の時が多いんです。ナナカラで本を読んだり、卓球したり、ご飯を食べたり、宿題したり、チャレンジしたりする様子をみて表情を描きました。

Q みんな裸足ですが、そこはどんな想いをこめましたか?

小久保

土を踏みしめる躍動感、力強さを表せたらと思いました。

Q 4ページ目は何を表現しているのですか?

小久保

先端でいるってことは未知のものに触れる機会が多いということです。未知のもの=分からないものって怖いですよね。その中に面白いものが埋まっていると分かっていても、やっぱり怖い。黒いウニウニしているものは「分からないもの」を表現しています。足でつんつん触っている子もいれば、手を突っ込もうとしている子もいます。逆に、全く興味がなく、他の方を向いている子もいます。ナナカラを見学しに行った時にわちゃわちゃしていて、みんなが同じことをやっていなくて良いという自由さを感じました。その自由さも表現しました。

ナナカラは未来に活きる力をつける場所

Q 5ページ目は少し暗く怖い印象ですが、なぜこのページを入れたのですか?

小久保

当然ですが、子どもたちは色んな感情を持っています。いつも楽しく明るく元気なわけではありません。怒ったり、泣いたり、悩んだり、苦しい思いもします。それも肯定されているのがナナカラだと思います。目の前に道がないので、うまく行かないのは当然です。そこを乗り越えてこそ、未来の道に繋がるということを次のページに描いています。

尾崎

6ページ目の「支離滅裂だった道が未来に繋がる道だった」ということが確信になったのはナナカラ卒業生へのヒアリングをしたときでした。「分からないモノに触ること、踏みだすことにナナカラで慣れたし、チャレンジする面白さを知った。だからこそ、中学生になっても色々なことにチャレンジできている」という生徒の話を聞いて、私たちが信じた道は間違ってなかったと泣きそうになりました。その気持ちを文章と絵に込めました。

Q 7ページ目はなぜみんな後ろむきなのですか?

小久保

大人は先に行く子どもたちの背中しか見られません。背中を見守ることってすごく勇気がいることです。本当は大人が先頭に立って道を歩き、危ない道ではないかチェックして転びそうな石を拾って、子どもたちは何も心配しなくてもよい状態で歩かせたい。でも、ナナカラはあえてそれをしない。その覚悟も込めています。また、踊っている子もいれば、何もしていない子もいます。歩くのも歩かないのも自由です。子どもたちの意志を尊重することをこの絵の中にも表現しています。

Q 未来って光のイメージで描かれることが多いですが、なぜ少し黒いのでしょうか?

小久保

4ページと同様ですが、やっぱり未来(未知のもの)って怖いんです。不安なんです。でも、そこに向かっていくことの面白さをナナカラで学べれば、未来にはきっと色とりどりの選択肢が待っています。

尾崎

ナナカラは未来に活きる力をつける場所です。このコンセプトブックでは一貫して「分からないモノ、初めてのモノに触れる機会、挑戦する機会、失敗する機会を通して、チャレンジする面白さを知ってほしい。それこそが先の見えない変化の激しいこれからの時代を生きるために必要な力だから。その願いを込めています。

Q 裏には7色で線が描かれていますが、これは何を表現しているのですか?

小久保

裏面はナナカラの7色の線で道を表しました。ポストカードとしても使ってもらえるように罫線の替わりなので、暴れすぎず、でも、これから子どもたちが歩く道の様に、ジグザグだったり、とぼとぼ歩きの点線だったりと、それぞれ表情のある線としました。

Q どんな画材を使うか最後まで迷われたとか?

小久保

小久保:本番を描くにあたり、あらゆる画材を試しまして(「画材の冒険」とも言う)、硬く・力強く・繊細 の要素を合わせもった、つけペン(漫画描く時などに使う)が一番しっくり来て、メインで使用しました。今までこういう線画は、デジタルか絵筆で描く事が多かったのですが、どうしてもここまでの硬く、強弱のある線は出しづらいので、今回のお仕事でつけペンの可能性に気付けて、大変楽しかったです!

プロフィール

小久保明美株式会社聴くと描く 代表取締役/イラストレーター

日本女子大学 住居化学住居環境デザイン専攻卒
イラストレーション青山塾 ドローイング科卒

筆でさっと描いた、オシャレで個性的な女の子を得意とする。企業の販促ツール・雑誌の挿絵・カフェのパッケージイラストなど、様々な媒体で活動中。

尾崎えり子株式会社市進ラボ 取締役/千葉県流山市ICT教育推進顧問

ナナカラの立ち上げ当初から関り、会社経営体験「ナナカラ会社」やリベラルアーツを学ぶ「ナナカラ大学」
など子どもたちと一緒に様々なプログラムを実施。また、千葉県流山市や奈良県生駒市の公教育の側面からもICTを活用した面白い授業プログラムを推進中。